NEW キックボクシングと音楽の話

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キックボクシングを始めて、もうすぐ3年目に入る。

最初は、
体を動かすため。
それぐらいの理由だった。

続けていくうちに、
音楽にも思っていた以上の影響が出た。
特に歌に、はっきりした変化があった。

声が変わったわけではない。
音域が広がったわけでもない。

ただ、
歌い方の選択肢が増えた。

それだけで、
楽曲制作のレンジは確実に広がった。

キックボクシングをやっていて強く意識するのは、
力を入れることよりも、
どこで力を使わないかという感覚だ。

力み続けると動きは鈍る。
呼吸が浅くなれば視野が狭くなる。
判断は遅れ、反応も雑になる。

これはリングの上でも、
マイクの前でも同じだった。

歌について
「力を抜け」と言われることは多いが、
完全に力を抜くことは不可能だ。

腹圧も必要だし、
声帯も使う。
姿勢も崩せない。

すべてをゼロにした瞬間、
声は成立しない。

必要なのは、
全部を抜くことではない。
無駄な力を使わないこと。

喉は張らない。
体幹は逃がさない。
感情は込めるが、力みは入れない。

キックを出す前の溜め。
パンチを戻す一瞬の間。

その「余白」が、
そのまま歌のフレージングに重なっていった。

2024年、事故で股関節を痛めた。

ローキック以外を蹴ると、
角度によっては一瞬で痛みが走る。
良くなっている兆しもなく、
リハビリ終了後、思い切ってMRIを撮りに行った。

結果、
骨に変形や明確な異常は見られなかった。

つまり、
壊れていたわけではなく、
使い方の問題だった。

そこからやり方を変えた。

どこまで動かすと痛いのか。
どの角度で蹴ると負担が来るのか。

自分の身体と相談しながら、
意図的に可動域に制限をかけてトレーニングするようになった。

無理に広げることをやめたことで、
痛みが出にくい蹴り方が見えてきた。
蹴ったあとに残る違和感も、以前よりかなり少ない。

「広げる」より、
「絞る」ことで成立する動きがある。

これは歌や、音楽制作でも同じだと思う。

無理に音を足さない。
無理にテクニックを使わない。
「できそう」に見せるための装飾をやめる。

現状の自分で、
どうやってキックボクシングを成立させるか。

それを考えるようになってから、
トレーニングの質が変わった。

蹴れる技だけを選ぶ。
出せない動きは、最初から捨てる。
その代わり、
今できる動きの精度を上げる。

キックボクシングは、
すべての技を出せるかどうかではない。
成立させられる技を、
正しいタイミングで出せるかどうかだ。

音楽も同じ。

現状の自分で、
どうやって音楽を成立させるか。

出せる音だけで、
成立する構成を考える。
今の声で、一番嘘のない距離を探す。

足りないものを埋めるのではなく、
今あるもので完結させる。

制限があるから、
選択に意味が生まれる。

今の自分にとって、
制限はブレーキではない。

精度を上げるためのガイドだ。

キックボクシングも、
音楽も、
結局やっていることは同じ。

「今の自分」で、
成立する形を探し続けること。

それができている限り、
止まっている感覚はない。

むしろ、
余計なものが削れて、
前よりもはっきりしてきている。